藤放しの藤とは (投稿14件)[1〜14]


1:一本けやきさん
今を盛りと赤い花を咲かせている葛藤だと思ってました。
「肥後三郎 弓に生きる」には、一晩水につけて柔らかくして使うとあります。
性質からすると、山藤のようですが。
ご存知の方、教えていただけますか。

2:1さん
削除されました。

3:明正さん
浅学の身なれば、私も興味が湧いたので「籐放しの籐」で検索してみました所、国際武道大学弓道研究室の弓具にヒットしました。

 そこには、「上質の籐であれば水につける必要は無い・・・」という記述がありましたが。

4:光点師さん
「・・・☆ 籐蔓を取りに深山に入るわけです。水の切れた時分の十二月から一月の半ばぐらいまでです。
雪が降っていたらかくれてしまって見当りませんから、雪のない寒いときに行くんです。・・・
谷あいには大きな籐があって、根が何メートルも地を走ってましてね。太さは小指くらいで、
できるだけ長いものを探して歩くわけですよ。良いのは地面からスーッと走って、
十メートルも十五メートルも長く走っている。
一年分くらい取ってきてそれを持ち帰って、二つに裂くんです。☆ 裂いたのを丸めて、乾燥させ
るんです。竹と同じで水分があると虫がつくんですよ。天日で充分乾燥させて一年分を作って
おくんです。」
(松永重児氏解説「弓の出来るまで(1)」より抜粋 機関誌『弓道』1981年5月号P.4-5)

ということで「山籐」です。

5:紫弓さん
 まず、籐放しは弓を打つとき楔で締めるときに使う籐を楔とともに放すことを言います。籐を水に浸す時間を考えると多分こちらの方をさしているでしょう。
 申し訳ないですが、こっちは何の籐を使っているか判らないので申し訳ありません。弓道講座にあった気がしますが、直に聞いた方が早い気がしますね。

 ちなみに短い時間で巻きつける籐は矢摺り籐や化粧籐などの細く加工されたものですね。こんな事を言い始めると、幾分か使った後村取り等で籐を取るのは籐放しになるのか?なんて奇問が現れます。

6:一本けやきさん
「弓の出来るまで」を探してみました。
全四回でしたね、写真が多くて解りやすいです。
教えていただいてありがとうございました。

初めて弦を掛けるみことを「新張」と言い、それまでは弓とは言わず「藤放し」という(紅葉重ね・・浦上栄)ようです。

矢摺り籐も山藤なのでしょうか。
籐の矢筒もそうでしょうか。
「この資料をみたら」で結構ですので、教えてください。

7:光点師さん
雄山閣の戦前版『弓道講座』(全22巻)の中に、東大弓術部の師範も努めた
戸倉章氏の「弓矢に関する植物」があります。精緻な挿絵も豊富で、前後篇併
せて104ページにおよぶ著作です。前篇は第2巻、後篇は第15巻に収めら
れています。

そこから一部抜粋

「我国産の籐の種類は少なく琉球台湾に産するに過ぎない。その用途は外国産
のものと同じであるが、古代用いられた籐は熱帯地方から輸入せられたもので
あろう。籐には種々の種類があり、印度、シャム、スマトラ其熱帯地方産のも
の全部では二百種類位あるであろう。そして日本に輸入され弓を巻く為めのも
のも一種に限られているとは思われない。・・・」(前篇(六)籐 P.44 
原文は旧漢字歴史的仮名遣い。P.45には籐の写真入り)

戦前版『弓道講座』は稀少本ですが、一本けやきさんは、『肥後三郎 弓にいきる』を
読み、私が示した26年前の『弓道』誌を早速参照する(参照できる)というほど
のお方。『弓道講座』も参照できる環境にいらっしゃる方だと推測しました。
以上、参考になれば・・・。

8:一本けやきさん
弓道講座の第2巻は昭和12年発行ですね。
そんなに前から籐は輸入されていたのですね。
戦前というイメージですと、畑仕事の合間に、裏山の手入れをして、農閑期に手仕事で竹や籐の細工をして暮らしていた、そのな農家のくらしを考えてしまいます。
ありがとうございました。

「古武器の職人(雄山閣)」で紹介されている職人さんたちは、後継者がおられて今も製作しておられるのでしょうか。

9:ポン酢ファンさん
皆さん博学ですねえ。

私は非才ゆえ、差がわからないので、ネット上の辞書(大辞泉)で調べてみました。

籐(とう)・・・
ヤシ科の蔓(つる)植物の総称。
葉は長さ1〜2メートルあり、羽状複葉。
茎は弾力があり強靭(きょうじん)で、籐細工に使用。
雌雄異株。
主に熱帯アジアやオーストラリア北部に分布。

藤(ふじ)・・・
マメ科の蔓性(つるせい)の落葉低木。
山野に自生し、つるは右巻き。
葉は卵形の小葉からなる羽状複葉。
5月ごろ、紫色の蝶形の花が総状に垂れ下がって咲く。
豆果は秋に暗褐色に熟す。
園芸品種が多く、棚作りなどにして観賞する。
つるから繊維をとり布に織った。野田藤(のだふじ)。
《季 春 実=秋》「草臥(くたびれ)て宿かるころや―の花/芭蕉」


藤放し(ふじはなし)は、弓打ちの終わった弓の楔を解いた状態のことを指します。新張りで「シナイ弦」がかかる前まではすべて藤放しと呼ぶようです。

これは私の推測ですが、
この弓打ちに使われる「弓となる本体(前竹・外竹・中打ち・額木)」「ササ」「楔」をつなぎ合わせ、
締め上げるための『縄』をよるための靱皮繊維を取り出していたのが「藤(ふじ)」なのではないでしょうか?

10:光点師さん
>締め上げるための『縄』をよるための
靱皮繊維を取り出していたのが「藤(ふじ)」なのではないでしょうか?

肥後三郎氏は、初代・当代とも、弓打ちでの貼り合わせの後、太さ1cmほどのものを
半円形(蒲鉾型)に裂き、乾燥させた籐蔓(本スレッド投稿4参照)で巻き、締め上げ、
楔を打ちます。縄の類は使いません。
おそらく、兄(当代肥後三郎)とともに、父(初代肥後三郎)の技法を受け継いでいる
松永重宣氏も同様だと思います。

氏(初代)は『弓にいきる』の中で、このことを「九州で学んだ」「東京で京弓を打って
いた頃は縒った麻縄で巻いていた。東京には籐蔓はなかった」と書いています。
・縒ってある麻縄は、強く巻けば巻くほど、引っ張りで縒りが戻り、緩む。
・縒り縄では楔が真っ直ぐに入らないことがある。

という問題が起こるのだそうです。

11:ポン酢ファンさん
>光点師さん

貴重な情報ありがとうございます。
普通の感覚では、裂いた藤蔓では使いにくい気がするんですが、職人さんの感覚は違うんですねえ〜。


>・縒ってある麻縄は、強く巻けば巻くほど、引っ張りで縒りが戻り、緩む。
>・縒り縄では楔が真っ直ぐに入らないことがある。

縄は普通甘く撚ってあるだけです。意図を考えればすぐわかりますが、強く撚れば「より」は戻りにくいですが、熱セットをかけないとチリチリになり扱いにくく、また滑りやすくなります。

荷物を麻紐で結束するときでも、普通は撚り方向に回転をかけながら解けないようにするのが常です。

楔がまっすぐ入らない・・・縄の断面はほぼ円、もしくは楕円ですから、楔の先端の加工次第で入るはずです。東京にいたときよりも熊本に移り住んでからのほうが、師も技術も上がっていることでしょうし、話を面白くするネタの様な気がするのですが。

穿った見方かなあ・・・。

12:一本けやきさん
「弓の出来るまで」によりますと、藤蔓は二つに裂いてあるから、皮が外になって、竹には肉の方がピタッと吸い付き、そこに楔を打っていくと吸い付いて曲がって入ることがない。
写真には、山で採った山藤を束ねた輪は大きくて、中に腕を通して肩に担いでいます、二つに裂いた藤蔓の輪はずっと小さくて、中に紐を通していくつかまとめて、壁につるしてあります。

13:ポン酢ファンさん
なるほど・・・いろいろな方法があるんですねえ。

となると、ますます疑問です。

弓打ちの際、「藤蔓」の裂いた肉側を使えば、楔を入れるのが困難な方向に進み、打ち上がった弓から楔をはずす際、ユリア系接着剤にしろニベにしろ相当「藤蔓」の繊維を引っ張り剥がすことが容易に想像できます。
能率ダウンなんだけどねえ。

今も松永系の匠はこの「藤蔓」を使っているのでしょうか?

普通、巻いてある縄のゆとりをなくし、締め上げるのが「楔」の役目で、あまり最初から全くすべりにくい材を使うと、ガチガチに接着面が締まりゆとりがなくなる気もしますが。

だから京弓と比べ、ニベ弓にニベの量が少ないと言われる由縁なのかな?

14:光点師さん
一本けやき様
もうお読みになったかもしれませんが、
本スレッド投稿No.7で紹介した「弓矢に関する植物」の「第三節 矢入具の材料植物」に、
「あをつゝ゛らふぢ」と「おほつゝ゛らふぢ」が登場します。
こちらは後篇(P.82-87 戦前版『弓道講座』(22巻本)の第15巻に収録)の中になります。
内容は少々込み入っていて、掲示板で簡単に紹介できる内容ではありません。

以上ご参考までに。


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